遺跡ファイル

古墳時代後期 山王山古墳 さんのうやまこふん
姉崎山王山古墳墳丘
 山王山古墳は、上海上国造(かみつうなかみのくにのみやつこ)の前身豪族の奥津城(おくつき)(墓所)とされる姉崎古墳群のうちの1基です。姉埼神社が鎮座する標高28m前後の台地上に築かれた、全長69m、後円部の高さ8m、前方部の高さが7.5mの前方後円墳です(残念ながら古墳は現存しません)。
 昭和38年に行われた発掘調査では、後円部中央の墳丘下2mの位置で、長さ9m、幅3.5mの粘土槨(ねんどかく)が見つかりました。この埋葬施設の中央に、長さ約7m、幅1,5mの船形木棺が検出され、金銅製冠や環頭大刀(かんとうたち)、胡ロク(矢の容器)などの副葬品が出土しました。
 被葬者は、冠を装着していることから、地域内の権力者であることは間違いありません。また、環頭大刀は、金銀装単龍式環頭大刀と呼ばれる非常に豪華なつくりの優品で、朝鮮半島にあった百済(くだら)の武寧王陵(ぶねいおうりょう)出土品とよく似ていますが、龍の形状変化から、若干新しく位置づけられるようです。武寧王の没年は、墓誌から西暦523年と判明しており、山王山古墳は6世紀中頃に築造されたと考えられます。

引用文献
市原市教育委員会1980『上総山王山古墳』
市原市教育委員会2011「姉崎山王山古墳」『発掘いちはらの遺跡』 4号