遺跡ファイル

旧石器時代 中永谷遺跡 なかながさく
 遺跡は、ちはら台地区の西部を占める草刈台地の北辺に位置しています。千原台地区土地区画整理事業に先行して、発掘調査されました。
 旧石器時代の石器群は、立川ローム層X層、IX層、VII層、IV層、III層の五つの文化層で検出されています。ナイフ形石器やスクレイパーなどの製品は少なく、ほとんどが剥片あるいはリタッチト・フレイクでした。各層合わせて9箇所からの検出でしたが、石器が比較的集中して出土した地点、少量の出土に留まった地点、出土しなかった部分を確認したことは、旧石器時代の人々の空間利用の多様性を考える上で貴重な成果と言えるでしょう。
 また、今後の検討資料として、焼土遺構が報告されています。この遺構はIX層中位で検出されました。平面形態は不整四角形で一辺約2.7mでした。中央に向かって緩やかに傾斜する皿状を呈する断面形態で、底面中央には被熱の痕跡が認められました。しかし、明瞭な柱穴は検出されず、底面も平坦ではないところから、住居跡と認定されるには至りませんでした。
 出土した石器の石材としては、総体的に珪質頁岩が目立ちます。その他には、黒曜石、玄武岩、安山岩、メノウ などがありますが、いずれも少数です。房総半島では嶺岡山系や銚子周辺に岩石の産出地が偏在しています。必要な機能を満たす石器を得るためには、局在する産出地の石材にのみ依存するのではなく、多方面との交流を通して、必要な石材を入手する必要があったと考えられます。
『千原台ニュータウンW 中永谷遺跡』(財)千葉県文化財センター 1991